NICOプレス Vol.155
2/12

interviewSSERPOC IN02PROFILE製品にデザインが不可欠であることは浸透してきたが、デザイナーの活用という面では、まだ経験をしたことがない県内企業も多いのではないだろうか。より魅力的な商品開発へのステップとしてなぜデザイン思考が不可欠か、また、デザイナーとの協働におけるポイントについて長岡造形大学の和田学長に話を伺った。 ISO国際標準規格のなかにヒューマンセンタード(人間中心設計)が謳われています。これは機械の進化に人が取り残され、思わぬ事故や、使っていて気持ちが良くないということが起きないよう、五感への訴求(ユーザビリティ)を考慮した設計をしなさい、というものです。今までのように効率優先だった経済構造ではコンシューマーが付いてこない時代になり、モノを作るときは使う人の感覚を最優先に考える、ユーザビリティに注目しなければならないということが言えます。 デザインという考え方が70年前にアメリカから伝わってきた当初、特にプロダクトデザインにおいては、エンジニアが仕組みや仕掛け、機能を作り、開発の終盤に商品力を上げるためにアピアランス(外見)を考えるのが、デザイナーに求められた仕事でした。 今は全く違い、デザイナーは商品開発の調査・企画段階から参加します。そうしなければ本当の意味でのユーザビリティに配慮したアピアランスは作れません。材料、装置、性能、材質、レイアウト、ユーザーが使う状態を一緒に考えていくことが重要です。この商品は素晴らしいな、使ってみたいなと思わせる、人の感性に訴えるものを作るには、そうしたプロセスを経て内からにじみ出てくるような魅力が必要なのです。 表面的な魅力だけでは消費者に見すかされる時代である今、こうしたデザイ岐阜県生まれ。東海大学卒業後、いすゞ自動車㈱で21年間デザイン業務に携わる。1994年から長岡造形大学・造形学部 助教授就任、1998年に教授就任。2012年学長就任。専門はトランスポーテーションデザイン。主に関わった車両のデザインは、いすゞ:エルフ、ロデオ、ビッグホーン、ウィザード、ミュー等、㈱大原鉄工所:ディアフォルテ、雷刃(ゲレンデ整備車)、10式雪上車等。公立大学法人 長岡造形大学 副理事長・学長ンプロセスを取り入れなかったら、将来存在できない。そういう時代になっていると思います。イノベーション分野で注目されるデザイン思考 近年、『デザイン思考』が注目されています。これは「デザイナーが仕事に関わると今までにない新しいものが生まれるのはなぜか」ということを科学的に探り、デザイナーの行動プロセスに秘密があるのではないかと研究したものです。 デザイン思考はスタンフォード大学で生まれ、同大学の教授が作ったデザインコンサルタント会社IDEOにFace-bookやヤフー、マイクロソフト、グーグルなどが発注してデザインプロセスを取り入れた結果、大きな成果が出たことで一躍注目を浴びました。 また、これからは複数の凡才で作ったものがひとりの天才のひらめきを凌駕すると言われます。デザイン思考をもった複数の専門職の人が刺激を与え合うことも重要だと考えます。いま、イノベーションを起こそうとしているシーンでは、いろいろな分野の人がデザイン思考をツールとして取り入れています。デザイナー以外の人も、デザイン思考を学び、デザインシンカー(※1)として発想を展開しています。 日本でも京都大学や慶応大学、各企業が取り入れるなど一大ムーブメントになっています。なぜなら今、日本はイノベーションの時代に入っているから。イノベーションを起こすにはデザイン思考を取り入れる必要があるのです。 一方、デザイナー以外のデザインシンカーが商品開発を行うと、プロトタイプまでは作れても、その先に結びつかないことが多いことも分かってきました。最終商品にするためには、美しさやワクワクするかといった作り手の思いを形に落とし込む「造形力」が必要で、それは訓練されたデザイナーでなければできないことだからです。支持を得るものを作るには調査段階からデザイナーと共に和田 裕 氏新展開にデザイナーは不可欠という時代

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る