NICOプレス Vol.154
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ここがポイント123 INSSERPOCThe key to vitalityパワーあふれる現場に潜入!ニイガタ元気企業新潟県無形文化財に指定されている柏崎の蝋型鋳金を受け継ぐ五代晴雲 原惣右ェ門工房。五代目である原聡氏は、伝統工芸の新たな可能性に向け、デザイナーとのコラボレーションによるアートピース(芸術作品)に挑戦している。公的プロジェクトをきっかけに新ジャンルに挑戦デザイナーとのコラボで自分の殻を破る伝統工芸の新たなブランディングを意識鋳工 原 聡 氏〒945-0851 柏崎市大久保2-3-12TEL/FAX.0257-22-3630E-mail souemon@ac.auone-net.jpURL https://imoji-souemon.com/工房内の作品の一部。工房見学を実施しており、工程や大久保鋳物の歴史などの説明も行っている。KYOプロジェクトの展示会の様子。写真右手前にあるのが同プロジェクトで制作した「ダンシング・フレイム」。展示会への参加費用は自己負担のため、NICOの「海外見本市等出展事業助成金」を活用した。滑らかな曲線が美しい「ダンシングフレイム」。この作品は、伝統的鋳造法で作った原型に磨きの工程を加え、さらに良質の炭で変形寸前の温度になるまで焼き酸化皮膜を定着させる「紫銅(しどう)焼き」という伝統的技法を加えて作られている。炎が生み出す模様「斑紫銅紋(はんしどうもん)」が特徴だ。五代目の原聡氏の作風は金属をしっかり磨くことで、表面の艶やかさと模様の面白さを引き出すのが特徴。「それぞれの代が得意な技術を持っています。伝統を学びつつ、五代目としていかに自分らしさを表現できるのか突き詰めていきたい」と語る原氏。09伝統工芸の技術で現代アートに取り組みグローバル市場へ挑戦工房を次代につなぐためのさまざまなトライアル 鋳物師としての歴史は20代にも及び、江戸後期から始まった蝋型鋳金も原聡氏で五代目という原惣右ェ門工房。元々、花器や文鎮、香立て、お茶道具などを制作していたが、現在はオーダーメイドの表札、アクセサリー、酒器、インテリア小物なども手掛けている。また2010年からの3年間は、NICOの百年物語に参画。そして今、工房の新たな展開として、現代アートという分野への挑戦を始めている。海外トップデザイナーとのコラボレーションというチャンス きっかけは関東経済産業局とシンガポールデザイン庁が行っている「共(KYO)プロジェクト」への参画。平成28年度から3ヵ年で、関東地域のものづくり事業者とシンガポールのトップデザイナーによるコラボによって、日本の伝統工芸のグローバル市場への進出を狙う事業となっている。 同工房では「ダンシング・フレイム」というオブジェ作品を制作。他人がデザインしたものを制作するということ自体が初挑戦だったという原氏は「サイズも大きく、かなり困難な作品でしたが、我々のできる最大限を考えてデザインされており、デザイナーの技量に感心させられました。こうしたサイズもデザインも、自分では絶対に挑戦しなかった部分だったので発見も多かった」と当時を振り返る。グローバルな展開の経験をブランディングに生かして 昨年はシンガポール、今年の3月は香港で行われた同プロジェクトの展示会に参加。また、昨年春は同プロジェクト関係者の勧めでニューヨークのアートインテリア系の展示会にも出品し、好評を得た。「あと1年で事業自体は終わりますが、引き続きデザイナーとコンタクトを取って連携していきたいと考えています。アートピースとしてのジャンルを開拓していきたい」と展望を語る原氏。「柏崎の方々にはこれまでもご愛顧いただいてきましたが、これからは外に向かって自分たちの存在を示す努力をしていきたい」。そのための工房のブランディングの始まりとして、今後10年を見据え、新しい表現を構築していく。大久保鋳物五代晴雲原 惣右ェ門工房活力カギの

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