「かざす」作業で完了するトレーサビリティシステム
株式会社トクサイ
品質保証グループ 部長 長崎 潔 氏
WM3課 検査係 係長 山賀 淑智 氏
IT戦略研究会のもとで新システムの開発に着手
トクサイは各種金属材の特殊細線製造を手がけ、製品は照明用光源や半導体・電子部品、人工衛星アンテナ、内視鏡・カテーテルなどに使われている。同社はNICOの平成27年度IT戦略研究会に参加し、奏風システムズと共に、新たなトレーサビリティシステムを確立。「近年、お客様から製品に対するより詳しい説明を要望される機会が増え、信頼を得るためには素早く正確な対応が必要でした。以前からお付き合いのある奏風システムズさんに相談していた時期に、研究会の話を聞きました。補助金も活用できるなど、メリットが大きかったです」と、開発担当者の山賀係長は話す。
タングステンやモリブデンを中心に、各種金属・合金を伸線(しんせん)加工技術で直径10ミクロンまで細くした金属細線を製造。最高3ミクロンまで細く加工する高度な技術を持つ。
NFCを利用することで工程履歴入力が容易に
同社ではこれまで、工程履歴は管理票に手書きで記入し、問い合わせがあると大量の管理票の中から対象製品の情報を探し出し複写していた。さらに、作業途中で工程が分割される場面があり、その際にはそこまでの履歴の写しを手書きして添付するなど、手間が多かった。
新システムは「スムーズに導入出来ること」「現場に負担を掛けないこと」「費用があまり掛からないこと」を重視。そして採用に至ったのが、NFC(近距離無線通信技術)を利用し、スマホをICカードにかざして情報入力するシステムだった。作業者、製品、設備にICカードを持たせることで、いつ、誰が、何を、どの設備で作業したかがデータベースに登録される。
構内にWi-Fiステーションを3ヵ所設置。現場では各工程ごとにICカードにスマホをかざし、作業データを入力する。
トレーサビリティの先に品質向上の可能性が見える
開発は超高速開発ツールを使い、ある程度設計が出来たところで、実際に使いながら修正していく「アジャイル型開発」で進行。その場でプログラマに課題を伝え、すぐに改善しテストすることで細かなニュアンスも伝わり、1年未満という短い期間で完了できたという。
現在は95%をこのシステムのもとで生産。トレーサビリティの充実に加え、各ロットの進捗状況や計測データの管理も容易になった。品質保証グループの長崎部長は「今まで抽出できなかったデータも簡単に取り出せ、集計したデータを分析することで、今後は品質向上など、大きな価値を生み出せると感じています」と語る。
さらに、予想以上に効果的だったのが、現場社員の精神的負担の軽減。手書きの面倒さから解放され、とても喜ばれたそうだ。「かざすだけ、という簡単さは今の時代だから可能になったもの。当社に合ったシステムが構築できて、よかったと思います」と話す山賀さん。デジタルの導入は、同社のこれからの可能性を広げていくはずだ。
「まずはこのシステムを確実なものに構築し、次のステップとして工程の進捗管理や、品質向上への活用などにつなげていきたいです。」と語る長崎部長(写真右)と山賀係長(写真左)。現場からリアルタイムにデータを自動収集・管理できることのメリットは大きい。
協力会社
奏風システムズ株式会社
〒950-0916 新潟市中央区米山4-1-31
紫竹総合ビル
TEL.025-282-5587 FAX.050-3730-5571
URL http://www.sofusys.co.jp/
ソフトウェア開発会社として製造業、卸・小売業、公共、医療・福祉、運輸・通信業などの分野で、コンピュータシステム・ビジネスアプリケーションの企画・開発・導入支援・サポートを行う。今回のトレーサビリティシステムにおいては、現状分析からプロトタイプ開発、テスト、改善を繰り返し行い、生産現場に根付いたシステムを開発。システム化の課題とゴールを共有し、担当者とともにコミュニケーションを深めながら構築した。
企業情報
株式会社トクサイ
〒940-1164 長岡市南陽1-1027-6
TEL.0258-22-2171 FAX.0258-22-2180
URL http://www.tokusai.co.jp/